今回はFender 1975 Stratocaster Black/Mのご紹介。
74年にアルダーボディからアッシュボディへ、スタッガードポールピースからフラットポールピースへの変更があった過渡期に製作されたモデルです。
70年代には数年おき毎に仕様変更が行われましたが、今回は75年のモデルなのでそこをクローズアップします。
では蘊蓄を少しばかり。
Fender社は72年にナチュラルカラーを発表した事で、それまでブロンドカラーに採用していたアッシュ材をベタ塗りのギターやベースに使う事になります。
Telecaster各シリーズでは反対にベタ塗りカラーの物にアルダー材やバスウッドを使う事にもつながります。
70年代に使用されるアッシュ材はホワイトアッシュと呼ばれるアメリカ大陸北部に生育している杢が使われ、50年代のアメリカ南部のスワンプアッシュとは別の物です。
アッシュ材は、根元と先端部では杢の密度が違います。
根元の方が水分を吸収する為に密度が濃く、先端に行くにつれ密度が薄くなる為、シーズニングによる乾燥では密度の濃い方が早く、より水分を吐き出す為重量が軽くなります。
これが個体差、アッシュ材の軽い物が少ない理由につながります。
当店で取り扱った70年代のアッシュ材のギターで脅威の3.1kgという軽さを実現した物があります。
あの尻軽め…
74年までのアッシュ材の、先述通りナチュラルカラーの物で重い物が少ないのはその材を使い、シーズニングにも時間をかける事ができたからだと推測します。
では次にピックアップについて。
スタッガードとフラットの前に、69年頃にターン数がそれまでの8,000回から7,600回に減ります。
ピックアップリード線をビニール被膜線の細い物を使用した事もブライトな音になった事に関係があるでしょう。
これは時代背景もありFuzz等のエフェクターが普及しだし、それまでの太いシングルコイルサウンドよりエフェクターに合わせた線の細い音に移行した為です。
ではポールピースについて。
フラットに変わるそれまでは凸凹なポールピースが当たり前でした。
出荷時は013〜のゲージでセットアップされており、3弦が巻弦で音量バランスを取る為です。
今の様に010〜のゲージに合わせてフラットになりました。
少しで終わるつもりが…
この辺でギター本体に目を向け直します。
相当量書いたのでまず一言で言うと、「このストラトは良い」です。
何が良いのかと突き詰めて行くとですね…バランスが良い。
ボディが若干重めなんですが構えた時にしっくりくるんです。
生鳴りが鳴りきる手前の感じ、アッシュボディ、メイプルネックのタイトな鳴りが、アンプを通すとええ音を奏でてくれます。
ジャンボフレットに打ち変えてあり派手目の音がこしょばい所に手が届くんです。
チューニングも安定していてアーミングでの狂いも少ないです。
肉付きの良い太めのネックシェイプに手が吸い付きます。
長時間持ってても飽きのこない、そんなストラトなんです。
ついつい手に取って弾いてしまいます。
私がVintageのストラトを持っていなかったら、これは迷わず〜ですね。
nagase